舞台
は昭和初期
の東京
。
浅草育
ちの主人公・成嶋綾子
は、甘味店
を営
む父
と二人暮
らし。タイピストとして働
いている。
久
しぶりに長兄
が顔
を見
せるという週末、近所
の寿司屋
から出前
を取
り、家族水入
らずの夕餉
を楽
しんでいた。
ふいに父
の正造
が切
り出
した。
「見慣
れねぇ名前
の奴
から手紙
が来
てんだけど」
父が見
せた見知
らぬ「弁護士事務所
」から届
いた封書
には、予想
もしなかった重大
な内容
が記
されていた。
「谷中法律事務所
の弁護士蒲生龍彦
と申
します。
先日逝去
された大富豪小沼三郎
の代理人
を務
める者
で、氏
の遺産相続
に関
してお話
したいことがあります」
目
もくらむような莫大
な遺産
。
(どういうこと……? 大富豪
の遺産
って、まるで少女小説
みたいじゃない)
戸惑
いながらも、綾子
は蒲生弁護士
の話
を聞
くことを承諾
した。
次兄
も駆
けつけ家族
が勢揃
いした自宅
にやってきた蒲生弁護士
は、綾子
に奇妙
な依頼
をする。
近々行
われる小沼老
の遺言状公開
の場
に立
ち会
い、相続執行
に協力
してほしい。
それ以上
の詳細
は、遺言状
を公開
するまでは不明
だと言
う。
綾子
が遺産
を相続
するわけでもないらしい。 なんとも曖昧
な話
に、疑心
と不安
が膨
らむ。
さらにその席上
で、綾子
は自身
に関
わる衝撃的
な秘密
を知
ってしまう。
自分
を信
じて出席
して欲
しいと蒲生弁護士
は言
い残
し立
ち去
った。
悲
しみと不安
と困惑
を抱
える綾子
を、久
しぶりに再会
した幼
なじみの佐伯潤一
は優
しく慰
め、そしてまっすぐな瞳
で求婚
する。
突然
の言葉
に驚
きつつ、綾子
の胸に甘
やかな気持
ちが広
がっていく。
遺言状公開
の日
が迫
る中
、潤一
の力強
い言葉
に背中
を押
されるように、綾子
は立
ち会
いを承諾
する。
そして当日
、ホテルに集
まった相続権利者
の面々
は──。
誰
かを愛
せば、誰
かに憎
まれる。
何
が真実
なのか、誰
が味方
なのか、瞬
きを繰
り返
すほど、謎
は入
り組
み底
なし沼
のように深
まっていく。
暗夜
の迷宮
をさまよう主人公
は、運命
の愛
をつかむことができるのか。